เข้าสู่ระบบ「実は伝えたいことがあるんだ」
カリナはルナフレアの目をじっと見て言った。
「伝えたいこと? ですか?」
きょとんとした表情をするルナフレア。そんな彼女の手を取って自室のリビングへ向かう。そこで向かい合って座り、カリナは切り出した。
「実は、信じられないかもしれないが……、俺がカーズなんだ」
「え?」
当然の反応。目の前にいる少女はあのムキムキのカーズとは似ても似つかない。
さてどう説明すれば良いのだろうか? ゲームの中でもう一人作ったキャラが自分でカーズのサブキャラとでも言えばいいのだろうか? だが今のこの世界は現実である。本来NPCのルナフレアにそんな説明が通用するはずがない。まるで理解が出来ないだろう。
手頃な喋れる召喚獣を呼び出して説明してもらうか? いや、彼らも本来カリナの所有する召喚体であり、カーズとは何の縁もない。アカウント共有の倉庫は使えないので、カーズのコレクションのアイテムを見せるのもダメだ。妹という設定である以上、兄から譲り受けたと言われればそれまでである。
これはもしかして詰んだかもしれない……。
「あの、もしそれが本当なら何か証拠はありますか?!」
ルナフレアが必死な顔でテーブル越しに身を乗り出して来る。
「俺がカーズだという証拠……。サブキャラで同じアカウントだという証拠ならあるんだが……」
「サブキャラ? アカウント?」
やはりその手の類の説明は通用しない。彼女の今の反応からして、ここが本来VRMMOの世界だという認識すらないだろう。うむむ、と頭を捻る。
「ルナフレア、妖精族のルナフレアとの間の証拠……」
そのとき、はっと一つの考えが浮かんだ。同じアカウントであるということは同一人物が中にいるということにはなる。ならば……。
「君はカーズに妖精の加護を与えていただろう? 俺が同じアカウントの同一人物であるなら、もしかしたらその加護の更新が可能になるかも知れない。これはある意味賭けだ。もしできなければ……、俺はただの大嘘つきだ。笑ってくれてもいい。でもチャンスをくれないだろうか?」
そう言って右手の掌を広げて彼女の方へを突き出す。
「確かに、私はカーズ様に妖精の加護をお与え致しました。もしカリナ様がカーズ様と同一人物であるのなら、その加護の更新が可能になるかも知れません。試してみる価値はありそうです」
そう言ってルナフレアは左手の掌をカリナの小さな右手の掌に重ねた。頼むから上手くいってくれとカリナは心の中で念じた。
ルナフレアが念じると、互いの手が光に包まれる。それが収束する様にカリナの手の甲に神秘的な紋章となって刻み込まれた。
「更新……、出来ました。生涯でただ一人にしかこの加護を与えることはできないのに、カリナ様の中の存在はカーズ様と同一人物ということの証明になります」
ほっ、と緊張していた力が抜けてカリナはソファーに深く沈み込んだ。恐らくこれまで誰も試したことがない実験だったであろう。本来なら無理だったかも知れない。だが、このVAOが現実になり、キャラというアバターよりも中の人格が優先されたというような現象が起きたことによる奇蹟が起こったのだった。
「これで証明になったかな?」
そう言って手の甲を見た後、ルナフレアを見た。彼女の美しい両の翠眼からは涙が止めどなく溢れていた。
「漸く、お会い出来ましたね……」
そのままカリナの下へ走り寄って来た彼女はまるで子供の様にわんわんと泣いた。
「もう、どれだけ待っていたと思っているんですか?! 100年も留守にして、私がどれだけ寂しかったか、カーズ様にはわかりますか? それなのにこんな女の子になって帰って来て、妹だなんて嘘を吐くし……!」
カリナは自分よりも背が高いルナフレアを抱き締めた。
「済まなかった。知らない間にまさかそんな時間が経っているなんて思いもよらなかったんだよ。それにこんな事態になるのならカーズの姿で戻れば良かったと後悔した。でも今更どうしようもないんだ。ゲームのシステムって言っても意味がわからないだろうし、って言い訳しても仕方ないな。済まなかった。これからは必ずここに帰って来るよ」
「絶対絶対、冒険に出かけても必ずここに帰って来て下さいよ! 約束ですからね!」
流れる涙が、抱き止めたカリナの顔の上から零れ落ちて、カリナの顔を濡らした。しばらくの間、ルナフレアが泣き止むことはなかった。
◆◆◆ 久方ぶりの真の再会を果たした二人は、落ち着くと、もうかなり遅い時間だということに気付いた。明日からは任務がある。就寝しようと、出されたネグリジェの様な寝間着に着替えると、カリナは自分の巨大なベッドに横になった。
ある意味異世界転生をしてしまった今日一日で様々なことがあり過ぎた。もうこのまま寝てしまおうと目を瞑ったとき、寝室のドアがノックされた。向こうから声が聞こえる。
「カーズ様、ルナフレアです。今日はご一緒しても宜しいでしょうか?」
また自分がふっといなくなるかもしれないと思ったのだろうか。ルナフレアの声は不安そうに聞こえた。それを断るのは無粋だとカリナは思った。それに今の自分は女性体である、間違いは起こらないだろうということで、入室を許可した。
「構わないよ。今まで寂しい思いをさせたんだから」
「ありがとうございます」と言って自分の枕を胸に抱えてルナフレアが入室して来た。薄着の寝間着だが、部屋が暗い為あまり良くは見えない。むしろその方が安心した。
「またもしかしたら暫く会えなくなると思うと寂しくて……」
「ああ、気にしなくていい。隣に寝たらいいよ」
「ありがとうございます、カーズ様」
カーズの左隣のベッドに入って来たルナフレアはカリナの右手を取った。
「うん、でも人前では俺はカリナだからカーズ呼びは止めてくれよ。それに男の寝室に入るなんて真似をしたらダメだぞ」
「わかっています。これからはカリナ様と呼ばせて頂きますから。それにカリナ様以外と一緒に就寝しようなどとは思いませんよ。それに今は私よりも小さな女の子じゃないですか。何も起こりませんよ。ただご一緒したかっただけなのですから」
「そっか? なら俺で良ければ別にいつでも一緒に寝るくらいはしてあげるよ」
「あ、そうそう、これからは女の子なのですから「俺」は禁止です。ちゃんと「私」と言って下さいね」
「ああ、うん、善処するよ……。でも女言葉なんて喋れないぞ」
ネカマのエクリアなら喜んで演技するだろうが、カリナには難しい注文である。
「女言葉を使わなくてもいいのです、ただ一人称は「私」に変えるだけで。それに私もカーズ様が女言葉を使うのを想像すると笑えて来てしまいますから」
随分勝手な言い草だ。でもこれまで迷惑を掛けたのだからそれくらいの我が儘は聞いてやろうと思うカリナだった。
「わかったよ、俺、じゃなくて「私」はカリナだ。これでいいか?」
それを聞いて満足そうな笑みを浮かべたルナフレアはカリナの方を向いて目を閉じた。カリナも彼女の方を向いて、差し出された右手を左手で握った。
「おやすみなさい、カリナ様。明日は素敵な朝食を作りますからね」
「ああ、おやすみ、ルナフレア」
二人は手を握ったまま眠りに落ちた。
◆◆◆ 翌朝、目が覚めるとルナフレアは既に起きていて、キッチンの方から楽しそうな鼻歌が聞こえて来る。ご機嫌に朝食の準備をしているのだろう、開けてあった寝室のドアの向こうから美味しそうな匂いが漂って来る。伸びをしてベッドから起き上がると、カリナはそのままキッチンへと向かった。そこにはやはり笑顔で朝食を作るルナフレアの姿があった。入り口から声を掛ける。
「おはよう、ルナフレア。今朝はご機嫌だな」
振り返ってルナフレアが笑顔で答える。
「ええ、それは勿論です。カリナ様の為にお食事を作れるのですから」
その屈託のない笑顔を見ると、自分がカーズであると告白して良かったと思える。そのままキッチンのテーブルへと腰掛ける。まだ寝間着のままだ。
「できました。でもその前にお着替えを済ませましょう」
そう言ってご機嫌なルナフレアに昨日メイド隊が創作した衣装を着せられる。
「カリナ様は可愛らしいのですから、これからは着るものにも気を配って下さいね。また新作が作られると思われるので、それはこちらで管理しておきますから」
「うへぇ、あんまりヒラヒラしたのは苦手なんだけどなぁ」
その後用意された豪華な朝食を二人で食べると、ルナフレアに見送られて玉座の間へと向かった。カシューからの呼び出しがあったためである。
昨日の今日で何の用事だろうかと思い、カリナは城仕えの人々の視線を浴びながら玉座の間への廊下を進んだ。
一夜明け、ザラーの街に清々しい朝が訪れた。窓から差し込む陽光に目を細めながら、カリナはベッド脇の例の「メイド隊からの衣装」セットの二つ目を取り出した。「……さて、今日の『着せ替え』はなんだ?」 恐る恐る広げたその衣装を見て、カリナは天を仰いだ。「あいつら……本当に森に行く気があるのか?」 そこに入っていたのは、白を基調とし、鮮やかな黄緑と黄色のリボンやフリルがあしらわれた、体のラインが出るタイトなローブ。しかもフードには、ふっくらとした「猫耳」がついている。インナーは紫に白と黒のデザインが施されたシックなワンピースだが、足元はガーターベルト付きの白いニーハイソックスに、黒地に白いラインが入ったショートブーツという、絶対領域を強調するような組み合わせだ。「防御力と動きやすさは最高級の素材らしいが……この猫耳は必要なのか? 完全にコスプレじゃないか」 ブツブツ文句を言いつつも着替えて鏡の前に立つと、そこにはあざといほどに可愛い「猫耳魔法少女」が完成していた。悔しいが、サイズも完璧だ。「ま、誰も見てない森の中だ。我慢するか」 フードを被って猫耳をピコピコさせながら、身だしなみを整えて隊員と共に階下へ降りる。「おはようございますにゃ、隊長。今日もバッチリ可愛いですにゃ」 「うるさい。行くぞ」 食堂に降りると、女将さんが満面の笑みで駆け寄ってきた。「おはよう、英雄さん! 昨日はあんたのおかげで、夜遅くまで祝杯を挙げる客で大忙しだったよ! 街を救ってくれて本当にありがとうねぇ」「いや、私はただのきっかけだ。皆が頑張ったからだよ」「謙虚だねぇ。さあ、今日はサービスで特盛にしておいたよ! しっかりおあがり!」 出された朝食は、厚切りのベーコンエッグに、山盛りのサラダ、そして焼きたてのパンと具沢山のスープ。カリナと隊員は感謝してそれを平らげ、エネルギーを充填した。 宿を出て、人目が少ない場所でペガサスを召喚する。カリナは猫耳フードを抑えながら天馬に跨り、北西の空へと舞い上がった。 ◆◆◆ ザラーの街を離れ、しばらく飛ぶと、眼下の景色は荒野から深い緑へと変わっていった。 『世界樹の森』。 その名の通り、視界の果てまで続く樹海だ。そしてその遥か彼方には、雲を突き抜けるほど巨大な一本の樹――世界樹が鎮座している。「でかいな……。遠近感がお
「うおおおおおおっ!! 勝ったぞぉぉぉぉ!!」 「我々の勝利だ! アレキサンド万歳! 緑の戦女神、万歳!」 総裁バズズが燃え尽き、残った魔物の群れが霧散したのを見届けた瞬間、砦に詰めていた騎士達や冒険者達から、大地を揺るがすような歓声が爆発した。彼らは武器を放り出し、兜を脱ぎ捨てて、戦場の中心で悪魔の素材を回収していたカリナの元へと駆け寄ってくる。「すげえ……本当に一人で、軍勢ごと悪魔を倒しちまったぞ……!」 「なんて強さだ、それに近くで見ると本当にお人形さんのように可愛らしい……!」 「あの細い腕のどこにあんな力が……。まさに戦場に降り立った女神だ!」 血と土埃にまみれたむさ苦しい男達が、キラキラした尊敬の眼差しでカリナを取り囲み、口々に称賛を浴びせる。その中心で、カリナの肩に乗ったケット・シー隊員は、ふんぞり返るように胸を張り、これ以上ないほどのドヤ顔を晒していた。「ふっふーん! 見たのにゃお前達! これが隊長の実力にゃ! もっと褒めて、もっと崇めるにゃ!」 まるで自分が倒したかのような態度だが、誰もそれを咎めない。むしろ「何だこの猫可愛いな」と頭を撫でられ、満更でもなさそうだ。 一方、当のカリナは居心地が悪そうに頬を掻いた。「いや、戦乙女とか女神とか、そういうのは止めてくれ。私はただの冒険者だよ」「ご謙遜を! 貴女様は今日、間違いなくこのザラーの街を、いや、アレキサンドの危機を救って下さったのです!」 指揮官を務めていたアレキサンドの騎士団長らしき男が、カリナの前に進み出て最敬礼をした。「この武功、必ずや本国のアレキサンド国王陛下にご報告致します。貴女様のような英雄が訪れてくれたとなれば、陛下も大層お喜びになるでしょう。是非いつか、王都へもお越しください。国を挙げて歓迎致します!」「あ、ああ……機会があればな」 熱烈な歓迎ぶりに、カリナはタジタジだ。このままでは胴上げでもされかねない雰囲気を感じ取り、カリナは素早く空を見上げた。「では、私は報告があるから戻る。後は任せるよ」「はっ! この御恩は忘れません! 緑の戦乙女に栄光あれ!」「戦乙女に栄光あれ!!」 数百人の兵士達が一斉に剣を掲げ、勝鬨を上げる。その熱狂的な声を背に受けて、カリナは再びペガサスを召喚し、隊員と共に空へと舞い上がった。 太陽はまだ高く、まぶしい日差しが照り
ヒースの部屋を出てロビーに戻ると、そこは殺気立った空気に包まれていた。 負傷している者、装備を点検して飛び出していく者。怒号と悲鳴が飛び交う中、数人の冒険者が地図を囲んで深刻な顔で話し合っているのが耳に入った。「南西の防衛線が危ない! 急造の砦を築いて凌いでいるが、魔物の数が多すぎる!」 「正規軍の騎士団も限界だ。このままじゃザラーまで雪崩れ込んでくるぞ!」 彼らの会話を聞いたカリナは、迷わず彼らの元へと歩み寄った。「その南西の砦、私が加勢に行こう」 凛とした声に、冒険者達が振り返る。だが、彼らの目に映ったのは、フリルたっぷりの緑のドレスコートを着た、深窓の令嬢のような美少女と、二足歩行の猫だった。「はぁ? なんだお嬢ちゃん、迷子か?」 「悪いが今は遊んでる場合じゃねぇんだ。お人形さんごっこなら他所でやってくれ」 男達は呆れたように手を振って追い払おうとする。無理もない。この血生臭い状況に、カリナの姿はあまりにも不釣り合いだった。「遊びじゃない。私は冒険者だ。その砦に向かうと言っているんだ」 カリナが出口へ向かおうとすると、男達が慌てて立ちはだかった。「おい待て待て! 死にに行く気か!?」 「そこはピクニックに行く場所じゃねぇんだぞ! そんなフリフリの恰好で戦場に行ってみろ、魔物の餌になるだけだ!」 「悪いことは言わねぇ、家に帰ってママのミルクでも飲んでな!」「隊長は凄いのにゃ! お前達こそ控えおろうなのにゃ!」 彼らは本気で心配し、必死に止めようとしている。根は良い奴らなのだろう。だが、今は一刻を争う。カリナは懐からAランクのギルドカードを取り出し、彼らの目の前に提示した。「忠告は感謝する。だが、心配は無用だ。私はAランク冒険者のカリナ。組合長ヒースからも直々に討伐の許可を得ている」 黄金色に輝くカードを見た瞬間、男達の顔色が変わり、ロビー中がどよめいた。「え、Aランク……!? この歳でか!?」 「ま、待てよ、カリナって……あのルミナス聖光国を救ったっていう、エデンの凄腕召喚士か!?」 噂はここまで届いていたらしい。彼らの表情が、驚愕から縋るような希望へと変わる。「あんたがあの英雄なのか……?! 俺達じゃどうにもなんねぇ数なんだ! 頼む、仲間達を助けてやってくれ!」「ああ、任された。吉報を待っていてくれ」「任せておくにゃ」
エデンを飛び立ち、ペガサスに乗って北西へ。眼下には雄大な景色が広がる。高度が上がるにつれ風は冷たくなり始めていたが、ペガサスの発する魔力の加護と、ルナフレアから渡された厚手のコートのおかげで、空の旅は快適そのものだった。 やがて右手遠くに、堅牢な城壁に囲まれた巨大な都市が見えてきた。無数の塔と城壁が幾重にも連なる、武骨ながらも美しい石造りの国。「あれが初期五大国の一つ、今の騎士国アレキサンドか……」 かつてゲーム時代、メインキャラであるカーズも、そしてこのサブキャラであるカリナも、冒険のスタート地点として選んだのがこの国だった。騎士や剣士など、物理防御と攻撃に特化した兵科を多く輩出する国。兄設定であるカーズがカシュー達とエデンを建国するずっと前、初心者時代に剣の腕を磨いた場所でもある。懐かしい景色に目を細めつつ、カリナはそこを通過し、さらに西へと進路を取った。 何度か地上に降りてペガサスを休ませ、隊員と軽食をとりながら進むうちに、太陽は西の地平線へと沈みかけ、空が紫と茜色のグラデーションに染まり始めた。「隊長、そろそろ日が暮れますにゃ。お腹も空いたにゃ」「そうだな。夜間の飛行は視界も悪いし、今日はこの辺りで宿をとろう」 カリナは眼下に見えてきた街の近くにペガサスを降ろした。労いの言葉と共に送還し、隊員を連れて徒歩で街の南門へと向かう。 見えてきたのは、高い石壁に囲まれた街。近づくにつれ、カリナは違和感を覚えた。記憶にあるここ「ザラーの街」は、ゲーム開始直後のプレイヤーが集まる、のどかで開放的な初心者用の街だったはずだ。 だが、目の前にあるのは、無数の傷跡が刻まれた分厚い城壁と、物々しいバリケード。100年という時は、平和だった始まりの街を、魔物の脅威に晒される最前線の拠点へと変貌させていたのだ。 石造りの門の前には、二人の兵士が立っていた。槍を持ち、アレキサンドの紋章が入った鎧を着ているが、その眼差しは鋭く、妙に殺気立っている。「止まれ。これより先はアレキサンド領ザラーの街だ。身分証の提示を」「ああ、冒険者だ」 カリナは首に掛けていたギルドカードを外し、兵士に手渡した。兵士は事務的な手つきでカードを受け取り、そこに刻まれたランクと名前を確認する。そして次の瞬間、その目が驚愕に見開かれた。「えっ……Aランク!? それに、名前はカリナ……
演習場での模擬戦は、カリナの圧倒的な勝利に終わった。リーサは完膚なきまでに叩きのめされたが、その表情は晴れやかだった。目の当たりにした召喚術の神髄に、彼女は心の底から感動していたのだ。 その後、一行は玉座の間へと移動した。カシュー王が玉座に腰を下ろし、エクリア、アステリオン、レミリア、そしてカリナとリーサがその前に並ぶ。騎士団の面々やルナフレアは、少し離れた場所で見守っていた。 カシュー王が威厳のある声で告げる。「これより、エルフの召喚士リーサを、エデン王国筆頭召喚術士カリナの代行として任命する」リーサは緊張した面持ちで、カシュー王の言葉に耳を傾ける。「リーサよ、カリナはエデンの特記戦力であり、その力は我が国の要である。しかし、彼女は多忙な身であり、常にこの地に留まることはできない。其方には、彼女の不在時にその力を代行し、エデンを守る重要な役割を担ってもらいたい」「ははっ、身に余る光栄にございます」 リーサは深く頭を下げ、カシュー王の言葉を承諾した。「カリナ、其方からも言葉をかけてやってくれ」 カシュー王に促され、カリナが前に出る。彼女はリーサを見つめ、静かに語りかけた。「リーサ、お前の実力は認める。だが、召喚術の道は険しい。決して慢心せず、精進を怠るなよ」「はい! 肝に銘じます、師匠!」「だから師匠はやめろと言っただろう」 カリナは苦笑しながらも、リーサの熱意を嬉しく思っていた。「リーサ、お前には期待している。エデンを、そして民を守るために、力を貸してくれ」「はい! この命に代えても、エデンをお守りします!」 リーサは力強く宣言し、カリナに忠誠を誓った。その瞳には、揺るぎない決意が宿っていた。 カシュー王は満足げに頷き、玉座から立ち上がった。「うむ。これにて任命式を終了する。皆の者、これからもエデンのために力を尽くしてくれ!」「はっ!」 玉座の間に、騎士達の力強い声が響き渡る。 こうして、エデンに新たな優秀な召喚士が加わった。リーサはカリナの代行として、そして一番弟子として、召喚術の道を歩み始めることとなる。 その後、カシュー王は皆を労い、祝宴が開かれることとなった。宴の席では、騎士達がカリナの武勇伝を語り合い、リーサも熱心に耳を傾けていた。 カリナはルナフレアにジュースのグラスを傾けながら、静かに呟いた。「これ
翌日の正午過ぎ。太陽が真上に昇り、演習場の砂埃を照らす頃、カリナはルナフレアを伴って騎士団演習場の門をくぐった。 門番の兵士達は、昨日カリナが見せた伝説級の精霊との戦いを目の当たりにしているため、最敬礼でカリナを出迎える。その瞳には畏敬の念が宿っていた。 演習場に入ると、円形の闘技場を見下ろす観覧席には、昨日の今日だというのに、またしても主要なメンバーが勢揃いしていた。 中央の貴賓席には、面白そうに身を乗り出すカシューと、その隣で扇子を片手に優雅に微笑む、完璧な美女の振りをしたエクリア。その後ろには、胃薬でも欲しそうな顔をしたアステリオンと、エクリアの代行であるレミリアが控えている。 騎士団席には、近衛騎士団長のクラウス、王国騎士団副団長のライアンをはじめとする騎士達。そして、戦車隊隊長のガレウスまでもが、「また凄いもんが見れるかもしれん」と最前列に陣取っていた。「やれやれ、暇人が多いなあ」 カリナが苦笑すると、隣を歩くルナフレアがくすりと笑った。「それだけカリナ様の力が注目されているということですよ。……では、私はあちらへ」 ルナフレアは演習場の端、関係者用の席へ向かう前に足を止め、カリナに向かって深々と頭を下げた。「カリナ様、あの世間知らずのエルフに、本物の召喚術というものをご教示なさって下さい。御武運を」「ああ、任せておけ。見ていてくれ」 ルナフレアの言葉に軽く手を振って応え、カリナは演習場の中央へと歩みを進める。そこには既に、対戦相手であるエルフの召喚士、リーサが待ち構えていた。 召喚士特有のローブを風になびかせ、手には身の丈ほどの樫の木の杖を握りしめている。その表情は硬いが、瞳には決して折れない強い意志と、カリナに対する侮りにも似た対抗心が燃えていた。「お待ちしておりました。逃げずに来たことだけは褒めて差し上げます」 リーサは杖の先をカリナに向け、挑発的な視線を送る。「陛下やアステリオン様が何を考えているのかは分かりませんが、召喚術とは長い修練と精霊との対話によってのみ成される神聖な儀式。あなたのような子供に務まるような軽いものではありません」 彼女の言葉に、観客席の騎士達がざわつく。「おいおい、死んだわあいつ……」「昨日のあれを見てないからって……」といった同情の声が漏れ聞こえてくるが、リーサの耳には届いて